フェリペ残留(濃厚)

たとえば、そう。時は小学生高学年。


時々、喋ったり、遊んだりするんだけど、特別仲がいいとは言えない友達。その彼が転校するという噂が流れて来た。


だけど、直接確かめるほどの距離感でもなく、ただ、居なくなれば寂しいなあと思いつつも、お別れ会の話もチラホラと出て来て、それさえも参加すべきなのかどうかわからない。


いよいよ、噂の日が近づいて来て、「ああ、もう彼とは遊べなくなるんだ」という物悲しい思いと、それもまたいいかという諦めのようなものが、ないまぜになった複雑な気持ちが胸の中で行ったり来たりする。


このまま別れるのも悪くないという気もしたが、ある時、偶然、廊下でばったり彼と会った。向こうも僕に気付き、あっと小さく声を上げた。


どう声をかけていいものかわからなかったが、せめて何かひとことくらいは言わなければ、と口を開こうとした僕よりも先に彼がポツリと言った。


「引っ越しなくなったんだ」

「え」


その時、僕がどういう顔をしたのかわからない。ただ、ほっとしたように彼が緊張を緩めたところを見れば、ポカンとしていたのだろう。


「また遊ぼうね」

「う、え、あ、ああ」


しどろもどろになった僕の答えに、彼は人の好い笑顔でにっこり頷いた。その笑顔が妙にくすぐったかった。


「じゃあ、また」

「お、おう」



たとえば、そう。そんな感じだ。


フェリペ。残留するのか。てっきりお別れだと思っていたけれど、だったらよろしく頼む。


だけど、もうちょっと体は鍛えような。

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